堺に来たら手土産にしたい老舗和スイーツ六選


某年賀状の影響を受けて書いた。
他にも良い店はあるけど、とりあえず6店まで書いたら飽きた。


■かん袋「くるみ餅」
堺で和菓子店と言えば真っ先にその名が挙がる老舗にして名店中の名店。“あんにくるんだ餅"で「くるみ餅」と呼ばれるこの銘菓は、関西各所で同種のものが見られるが、かん袋のそれは堺のこの店ただ一軒でしか手に入らない上、他店のものとは別格の味である。売切れ御免の当日販売のみ。週末ともなれば、夏の炎天下であろうが寒風吹きすさぶ酷寒の冬であろうが、終日行列が絶えることはない。
やわらかな餅を包む美しいうぐいす色のあんは、枝豆ベースと言われるが、その製法は鎌倉時代の創業以来門外不出の秘伝とされる。素材の風味をわずかに含んだ豊かで深みのある味わいは、甘さを追及した和菓子のひとつの極みと言えよう。
堺市堺区新在家町東1-2-1


■ねぼけ堂「玉子煎餅」
小麦と砂糖とたまごのみで作られる素朴な味わいの煎餅。なめらかに焼き上げられた小麦色の表面には、堺の風景や干支など様々な模様が焼き込まれており、目にも楽しい。香ばしい小麦の風味とサクサクふんわりとした食感が相まって生み出される味には、日本人にしか感じられない懐かしさがある。温かい煎茶を飲みながら玉子煎餅を口にすれば、自然と子供の頃の思い出が目に浮かび、1枚、また1枚と手が伸びる。そんなやさしい味わいである。ピーナツの入った格子煎餅も絶品。
本店:堺市堺区賑町4-2-2
堺東店:堺市堺区北花田口町3-2-29


■南曜堂「乳守もなか」
知る人ぞ知る堺の最中専門店。触れただけで崩れるほど繊細な皮に、上品な甘さのあんこがずっしりと重みが感じられるほどいっぱいに詰まっている。口にほうばれば、最中の皮としては信じがたいほどパリパリとした食感で、皮の香ばしさとあんこの甘みが口いっぱいに広がる。パラパラとこぼれ落ちる皮くずすらもったいない。
南曜堂の最中は、和菓子や最中の苦手な人をも一口で魅了し、最中好きには異口同音「ここの最中以外食べられなくなった」と言わせる。和菓子における小さな奇跡である。
つぶあんこしあん、ゆずあんの三種の「乳守(ちもり)もなか」のほか、お城や小槌、ちんちん電車を模ったものなど多種多様。すべて国産材料使用、添加物なし、店主の完全手作りである。
堺市堺区南旅篭町東1-2-7


■福榮堂「松露だんご」
大阪湾を臨む海沿いの町、路面電車の駅とレトロな町並みが残る、かつて別荘地として賑わった浜寺に福榮堂はある。海岸線に並ぶ松の木の根元に生える松露を模した「松露だんご」がこの店の看板であり、たびたび皇族にも献上されたという逸品である。もっちりとした団子を包むこしあんは、しっとりとしていて口の中でとろけるようなやわらかさを持つ。この芸術的なこしあんは、数時間をかけてあく抜きされ、夜を通してさらして作られる。白あんと黒あんの二種類あり、それぞれが磨き抜かれた玉のような団子にひとつひとつ丁寧に仕上げられる。その姿は朝露のように美しく、そしてどこかはかない。
堺市西区浜寺公園町2-141


■曽呂利「大鏡
だんだん面倒くさくなってきた。美味しんぼってすごいなあ。
曽呂利の店名は堺の刀鞘職人曽呂利新左衛門(そろりしんざえもん)にちなむ。古墳の町堺において、三種の神器八咫鏡」を模ったこの「大鏡」は、よくある回転焼のようなもの、ではない。「大鏡」は、天然素材、無添加で、一枚一枚手作りで作られる。ふわふわでありながらもっちりとした食べ応えのある独特の食感の皮に、豆の味がしっかりと残る白あんがたっぷりと入っている。特筆すべきはその大きさで9cmもある。
是非とも作りたてか、温めてから食したい。
本店:堺市堺区中之町東4-1-26
その他複数店舗有り


■本家小嶋「芥子餅」
創業は室町時代にさかのぼる。太閤秀吉や千利休茶の湯の席で愛されたというこの店の芥子餅は、もち米を挽いて練った求肥(ぎゅうひ)でこしあんを包みこみ、表面をケシの実で覆った和菓子である。決して見た目の華やかさはないが、表面を覆うケシの実が生む落ち着いた色合いは、茶器の名器にも通じる侘び寂びの趣があり、和菓子の芸術品とも言えよう。
品質に徹底的にこだわり、選び抜いた材料をすべて手作業で仕上げる製法は、500年近くに渡り老舗の技として守られている。こしあんは1週間寝かされ最も熟成された状態で使用される。ケシの実は毎日使う分だけが炒られる。ケシの実のプチプチとした食感と香ばしさ、そしてもちもちとした求肥に包まれたやわらかなこしあんの甘さが生み出す味わいは、他のどの和菓子にもない独特のものである。
堺市堺区大町西1-2-21