“大変化”についてのFAQ

嵐のような反応を読んでhttp://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20070319/p1 より。



Q:“大変化”ってだから何なの?
情報技術による社会の変革。平たく言うと情報革命。ただし、すごい検索エンジンができたとか、技術そのものの変化を指すのではなく、すごい技術によって人々の生活が変わり、価値観に影響を与え、社会そのものが一変してしまうような、大きな変化の流れ全体を指している。
どれぐらい大きな変化かというと、よく例に挙げられるのは、産業革命によって「百姓がサラリーマンになってみんなが貴族のような生活を送るようになった」ような社会の大変化。例えば、音楽を聴きながら腹いっぱいの食事をして、毎日違う服を着て、休暇には海外旅行に行く、というような生活は、産業革命以前には王侯貴族にしか許されなかった。このような変化に匹敵するような社会の変化が現在進行形で進んでいる、という話。

Q:みんなもっと金持ちになるってこと?
ちょっと違う。日本は金で実現できる物質的な充足をほぼ達成してしまってるのであんまり変わらない(技術の進化によって便利にはなるけど豊かにはならない)。ただし中国やインドなんかは今も劇的に豊かになって行ってるから正しいといえば正しい。
それよりも重要なのは、頭の中の充足が劇的に達成されること。産業革命で「腹減った」とか「寒い」とかがほぼ克服されたように、情報革命では「悲しい」とか「つらい」とか「ムカツク」とか「ワカンネ」とかいうのがほとんどなくなる。
すでに、ケータイのおかげで遅刻のイライラが無くなったり、ネットのおかげで色んな悶々が解消されたり。これからもどんどん頭の中や気持ちがすっきりしていく。


Q:でもネットのおかげで余計なイライラとかも増えたじゃん。
もちろん変化に伴う弊害はいっぱいある。産業革命のときも鉄道によって人々が簡単に長距離移動するようになったおかげでコレラ結核とかの伝染病が爆発的に流行した。でも(欧米の)人々は公衆衛生を完備してそれらを克服し、結果的に以前よりずっと良い社会が生まれた。
今も精神的にギスギスしたりストレスがたまったり社会的には不安定化してるけど、そのうち克服される。多分。


Q:イマイチ、そんな大変化の実感なんてないんだけど?
日々の変化は微小で個人差があるから、自覚してないとわからない。
“大変化”は、戦争とか革命で一夜にして世界がひっくり返るとか、世界を飲み込む大洪水が起きるとか、コンピューターが突然反乱を起こすとか、そういう全員に同時的に起きるわかりやすい変化ではなくて、ゆっくりと(歴史全体から見れば爆速なんだけど)時間をかけて徐々に進行する大きな社会の変化なのでわかりにくい。産業革命による大変化も100年以上続いたわけで。
ある日、ふとした時に、「ケータイがなかった時ってどうしてたんだろう?」とか思うような意識しないと感じない変化が色んなところで次々と起きている時代。ついでに言うと、それが違う世代が経験した変化(例えばPCが無かった時、どうやって大量の書類を作ってたかとか)だったりすると、もう実感すること自体が不可能になる。それぐらい長いスパンで捉えないといけない。


Q:なんかよくワカンネ。はっきり「未来はこうなる!」って言ってくれればいいのに。
変化の後、社会がどういう風に変わるかっていうのは、想像の埒外のことなので、実は偉い人もよくわかっていない。つーか、予想してもはずれる確率が高いので自分の株を下げないようにうまいこと言及を避ける。だから、梅田さんとか(トーマス・フリードマンでもアルビン・トフラーでもいいんだけど)が熱く語るわりには、なんかケツに残糞感があるような、もにょもにょした言い方になってしまう。
ただ、大変化が起きるのは、もう起き始めてるのは誰の目にも明らかだし、なんか始めたり備えたりするならさっさとした方がいいよって言うのが一致した意見なんだと思う。

情報革命においては、インターネット技術の発展自体が予測困難な事実だった。さらに、そこにリアルと全く異なる価値観や概念に支配された世界が出現するなどという予測は、そりゃまあ、1945年とかには予測不可能だったでしょ。今、未来を予想して漠然とした言い方になるのは仕方ない。だけど、90年代あたりにネットワークの可能性に気づいてる人はかなり多かったし、今、はてな界隈をうろついているような人たちなら、遅くても2005年ころには、人類が全く新たな世界を築き始めていることになんとなく気づいていたと思う。だから、予測より変化の芽を素早く見つけて臨機応変に応じられるようにしておくのが重要ですよ、と言ってる。


Q:よく2020年あたりが境目だと言われるのはなんか理由があんの?
多分、インターネットがひとつの極みに到達する。ような発明がありそう。
ちなみに、鉄道が始めて創業されてから40年後にアメリカで大陸横断鉄道が開通し、クックが電信を事業化して40年後にベルが電話機を発明したという歴史がある。別に情報革命をこれらの技術革命に完全に相対化させる必要は無いんだけど、人間の社会で、技術が新たな技術を生むまでにはこれくらいの期間が必要なのかなと思うし、そうすると、インターネットの誕生をNSFNetが開発された86年とすると、40年後っていうのが2025年あたりだから、この前後かなという気はする。

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以上。
またなんか思いついたら書く。




【参考図書】


フラット化する世界(上)

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富の未来 上巻

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ネクスト・ソサエティ ― 歴史が見たことのない未来がはじまる

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ぼくたちの洗脳社会 (朝日文庫)

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ゴールドラッシュの「超」ビジネスモデル

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